肩こりは大きく分けると2種類ある

肩こりという言葉はとても身近ですが、実はその中身は一つではありません。一般的には「肩の筋肉が硬くなっている状態」としてまとめて考えられがちですが、理学療法士の視点で身体を見ていくと、肩こりにはいくつかのパターンがあります。

その中でも特に大切なのが、肩まわりの筋緊張が高くなっている「過緊張タイプ」と、筋緊張が低く、肩甲骨上部の筋肉が持続的に引き伸ばされることで起こる「低緊張タイプ」です。

この2つは、どちらも本人としては「肩がつらい」「重い」「だるい」「張る」と感じやすいため、見た目だけでは同じ肩こりに見えることがあります。しかし実際には、身体の中で起きていることはかなり異なります。

つまり、同じ肩こりに見えても、筋肉が頑張りすぎてつらい肩こりと、筋肉がうまく働けず伸ばされ続けてつらい肩こりがあるということです。

この違いを知らずに、すべての肩こりに同じ対処をしてしまうと、かえって改善しにくくなることがあります。たとえば、本来は支える力をつけたい低緊張タイプの肩こりに対して、ひたすら緩めることばかりを行ってしまうと、余計に不安定になることもあります。反対に、常に力が入りすぎている過緊張タイプに対して、さらに頑張って鍛える方向へ進めてしまうと、肩まわりの負担が強まることもあります。

この記事では、肩こりをこの2つのタイプに分けながら、それぞれの特徴や起こりやすい姿勢、身体の中で何が起きているのか、そしてなぜ対処法が変わってくるのかを詳しく整理していきます。

目次

過緊張タイプの肩こりとは何か

まずひとつ目が、過緊張タイプの肩こりです。これは多くの方がイメージしやすい肩こりで、首から肩にかけての筋肉、とくに僧帽筋上部や肩甲挙筋、胸鎖乳突筋まわりなどが緊張しやすく、常に力が入り続けている状態です。

このタイプでは、筋肉が必要以上に働き続けることで血流が低下しやすくなり、重だるさ、張り感、詰まり感、首の動かしにくさなどが出やすくなります。ひどくなると頭痛や目の疲れ、呼吸の浅さ、食いしばり感などを伴うこともあります。

よくある背景としては、長時間のデスクワーク、スマホ操作、精神的ストレス、緊張しやすい性格、呼吸の浅さ、肩をすくめるような姿勢のクセなどがあります。身体が「がんばるモード」に入り続けている方に多く見られるタイプです。

このタイプの方を姿勢から見ると、頭が前に出やすく、胸郭が硬く、肩が上に持ち上がるような位置になっていることがあります。肩甲骨も本来の位置よりやや上方に引かれやすく、首と肩の境目が盛り上がるような見た目になることも少なくありません。

つまり過緊張タイプの肩こりは、肩まわりの筋肉が「働きすぎている」状態です。動いていないように見えても、実際には必要以上の筋活動が持続しているため、休むべき筋肉が休めなくなっているのです。

低緊張タイプの肩こりとは何か

もうひとつが、低緊張タイプの肩こりです。こちらは一般には見落とされやすいのですが、実際にはとても多いタイプです。

このタイプでは、肩まわりの筋肉が強く縮こまっているというよりも、むしろ筋緊張が低く、肩甲骨上部の筋肉が長い時間引き伸ばされ続けています。その結果として、だるさ、重さ、鈍い痛み、常に背中の上部が疲れる感じなどが生じます。

ここで重要なのは、筋肉は縮んでいる時だけでなく、伸ばされ続けている時にもつらくなるということです。

たとえば肩甲骨が外側へ広がり、前方へ滑るような位置にあると、肩甲骨の内側上部や首の付け根に近い筋肉は、ずっと引っ張られたような状態になります。一見すると力が入っていないように見えるのに、本人は「ずっと肩が重い」「背中の上のほうがつらい」と感じることがあります。

このタイプの方では、猫背姿勢、胸郭の落ち込み、肩甲骨の外転、上肢を前方で使う生活習慣などが背景にあることが多く見られます。肩が前に入り、腕の重さをうまく体幹で支えられず、肩甲骨上部の筋群が受け身の状態で引っ張られ続けているイメージです。

つまり低緊張タイプの肩こりは、筋肉が「頑張りすぎている」のではなく、うまく支えられないまま、だらんと引き伸ばされ続けて疲れている状態と言えます。

なぜ同じ「肩こり」に感じるのか

ここで疑問になるのが、なぜ正反対のような状態なのに、どちらも肩こりとして感じられるのか、という点です。

その理由は、私たちが感じている「こり」や「張り」が、必ずしも筋肉が硬く縮んでいることだけを意味していないからです。筋肉は、過剰に収縮しても、持続的に引き伸ばされても、循環不良や代謝の偏り、感覚受容器への刺激が生じ、結果として不快感や鈍痛を感じやすくなります。

また、肩まわりは頭や腕の重さの影響を受けやすく、姿勢や呼吸、視線、精神的ストレス、腕の使い方など、さまざまな要素の影響が集まりやすい部位でもあります。そのため、肩こりという症状は「結果」として似ていても、その原因となる身体の状態は大きく異なることがあるのです。

理学療法士の評価では、この違いを見極めることが非常に重要になります。なぜなら、原因が違えば、整えるべき方向も変わるからです。

過緊張タイプに多い身体の特徴

過緊張タイプの方には、いくつか共通しやすい身体の特徴があります。

まず多いのが、頭部前方位です。頭が体幹より前に出ると、首から肩にかけての筋肉は、その重さを支えるために持続的に働かざるを得ません。頭の重さは成人で数キログラムありますが、前に出るほど支える負荷は大きくなります。

さらに、胸郭が硬く呼吸が浅い方では、本来は横隔膜が担いたい呼吸の仕事を、首や肩まわりの補助呼吸筋が肩代わりすることがあります。すると、呼吸するたびに首や肩が頑張ることになり、安静時でも筋緊張が高まりやすくなります。

精神的な緊張もこのタイプには大きく関係します。集中している時、寒い時、不安が強い時、人は無意識に肩をすくめ、顎を引き、身体を固めやすくなります。その状態が日常的に続くと、肩こりは慢性化しやすくなります。

このタイプでは、触ると筋肉が明らかに張っていることが多く、「押すと痛い」「首を回すとつっぱる」「肩が上がったまま下りない感じがする」といった訴えがよく聞かれます。

低緊張タイプに多い身体の特徴

低緊張タイプでは、過緊張タイプとは違う特徴が見られます。

代表的なのは、胸椎の丸まりが強く、胸郭が下がり、肩甲骨が外へ広がりやすい姿勢です。いわゆる猫背姿勢の中でも、肩甲骨が背中の上で安定せず、前外側へ流れてしまうような状態です。

この姿勢では、肩甲骨を本来の位置に保つ筋群、とくに僧帽筋中部・下部や前鋸筋、深部の安定化に関わる筋群がうまく働きにくくなります。その結果、肩甲骨の上部内側周辺の筋肉が常に引っ張られるような位置関係になり、鈍いこり感やだるさが続きやすくなります。

このタイプの方は、触った時に筋肉がカチカチに硬いとは限りません。むしろ「柔らかいのに重い」「押されると気持ちいいけれどすぐ戻る」「マッサージを受けても長持ちしない」といった特徴が見られることがあります。

また、腕を前で使う時間が長い方、パソコン作業やスマホ操作、育児で抱っこが多い方、胸の前で手を使い続ける仕事の方などに多く見られます。支えるべき筋肉が働きにくく、腕の重さを肩甲骨まわりが受け身で引っ張られながら耐えているような状態です。

対処法が変わる理由

この2つのタイプを分けて考える意味は、まさにここにあります。肩こりの改善では、何を緩めるかだけでなく、何を支えられるようにするかが大切です。

過緊張タイプでは、まず過剰に入っている力を抜けるようにすることが重要です。呼吸を整える、胸郭や胸椎の動きを出す、首や肩の過活動を減らす、視線や顎の位置を調整するなど、身体を「頑張りすぎない状態」に戻していく必要があります。

一方、低緊張タイプでは、ただ緩めるだけでは不十分なことがあります。なぜなら、すでに支えが足りていないからです。このタイプでは、肩甲骨を安定させる筋群や体幹の支持性、胸郭の位置、腕の使い方を整えながら、引き伸ばされ続けない身体の使い方を再学習していくことが大切になります。

つまり、過緊張タイプには「抜く」「下げる」「広げる」といった方向性が必要になりやすく、低緊張タイプには「支える」「乗せる」「安定させる」といった方向性が必要になりやすいのです。

マッサージだけで戻りやすい人は低緊張タイプかもしれない

肩こりの中には、マッサージを受けると一時的には楽になるのに、すぐ元に戻ってしまう方がいます。もちろん過緊張タイプでも戻りやすいことはありますが、特に低緊張タイプではこの傾向が強く出やすいことがあります。

なぜなら、引き伸ばされて疲れている筋肉を一時的にほぐしても、肩甲骨や胸郭の位置関係が変わっていなければ、またすぐ同じように引っ張られるからです。

これは例えるなら、常に引っ張られているロープを一時的に手で揺らして緩めても、引っ張る方向が変わらなければすぐ張ってしまうのと似ています。

そのため、低緊張タイプでは、単に「凝っている場所をほぐす」だけではなく、肩甲骨の土台となる胸郭や背骨、体幹との関係まで整えることが重要になります。

理学療法士の視点で大切にしたいこと

理学療法士の視点で肩こりを見るときに大切なのは、「どこがこっているか」だけではなく、なぜその筋肉がそういう状態になっているのかを見ることです。

肩そのものだけを見ていては、本当の原因を見落とすことがあります。頭の位置、胸郭の動き、呼吸のパターン、肩甲骨の安定性、体幹の支持性、骨盤や足元の土台、視線や腕の使い方など、肩こりは全身の使い方の結果として現れることが少なくありません。

過緊張タイプの方では、「力を抜くのが苦手」「呼吸が浅い」「いつも急いでいる」といった生活背景が見えることがあります。低緊張タイプの方では、「長時間座っている」「姿勢を支えるのが苦手」「楽な姿勢に流れやすい」といった特徴が見えることがあります。

つまり肩こりは、単なる局所の問題ではなく、その人の生活習慣や身体の使い方のクセが表れているサインでもあるのです。

まとめ

肩こりは一つではなく、大きく分けると肩まわりの筋緊張が高い過緊張タイプと、筋緊張が低く肩甲骨上部の筋肉が持続的に引き伸ばされて生じる低緊張タイプがあります。

過緊張タイプは、筋肉が働きすぎて休めない肩こりです。首肩に力が入りやすく、呼吸の浅さやストレス、頭が前に出る姿勢などが関わりやすくなります。

低緊張タイプは、筋肉がうまく支えられず、引き伸ばされ続けて疲れている肩こりです。猫背や肩甲骨の外広がり、胸郭の落ち込み、体幹の支持性低下などが関わりやすくなります。

同じ「肩こり」でも、身体の中で起きていることが違えば、必要な対処も変わります。だからこそ、自分の肩こりが「力みすぎ」なのか、「支えられなさすぎ」なのかを見極めることが大切です。

肩こりを根本から見直したいときは、ただ揉む、ただ伸ばすだけではなく、肩こりが起きている背景に目を向けてみましょう。身体はとても正直で、今の使い方の結果が肩に表れていることが少なくありません。

本当に必要なのは、肩だけを何とかすることではなく、その肩が無理なく働ける全身の状態をつくることです。肩こりを繰り返さないためには、自分のタイプを知り、それに合った整え方を選ぶことが大切になります。

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