エロンゲーションが「できない人」の共通点|なぜ伸ばそうとしても伸びないのか

ピラティスや姿勢改善の指導現場で、「背骨を伸ばして」「上に引き上がるように」と声をかけても、うまくエロンゲーションが作れない人は意外と多いです。。
一生懸命に姿勢を正そうとしているのに、首や肩が力み、呼吸が浅くなり、かえって苦しそうな姿勢になってしまう。このようなケースは決して珍しくありません。
エロンゲーションができない理由は、柔軟性や筋力不足ではなく、身体認知・姿勢制御・重力との関係性に問題がある場合がほとんどです。
本記事では、エロンゲーションがうまく成立しない人に共通する特徴を、ピラティス視点で解説します。
そもそもエロンゲーションとは何か
エロンゲーションとは、単に背筋を伸ばす動作ではありません。ピラティスにおけるエロンゲーションとは、
- 重力に対して身体が無理なく拮抗している
- 関節に過剰な圧縮や力みがない
- 呼吸と姿勢が調和している
といった全身が協調した「状態」を指します。つまり、「頑張って作る姿勢」ではなく、「結果として現れる姿勢」なのです。
エロンゲーションができない人の共通点①「上から伸びようとする」
最も多い共通点は、エロンゲーションを上方向の意識だけで作ろうとすることです。
頭を引き上げる、胸を張る、背中を反らすといった意識が強いと、首・肩・背部の筋肉が過剰に働きます。その結果、身体は安定を失い、無意識に緊張で姿勢を固めてしまいます。
本来、エロンゲーションは下からの支持があって初めて成立します。足部や骨盤が不安定なまま上に伸びようとすると、力みしか生まれません。
共通点② 足部感覚が弱い
エロンゲーションができない人の多くは、足裏の感覚が非常に乏しい傾向があります。
足部は姿勢制御における最大の感覚入力源です。床をどう感じているか、どこに体重が乗っているかが曖昧な状態では、脳は「不安定」と判断し、身体を固めて守ろうとします。
その結果
- 背骨を伸ばす余裕がなくなる
- 体幹がロックされる
- 呼吸が浅くなる
といった反応が起こり、エロンゲーションが阻害されます。
共通点③ 骨盤と胸郭の位置関係が崩れている
姿勢改善の現場でよく見られるのが、骨盤後傾や前傾が強く、胸郭との位置関係が崩れているケースです。
この状態では、背骨の上下にスペースがなく、物理的に「伸びる余地」がありません。いくら意識を高めても、構造的にエロンゲーションが起こりにくい状態です。
ピラティスでは、まず骨盤と胸郭をニュートラルに近づけることで、背骨が自然に伸びる準備を整えます。
共通点④ 呼吸が浅く、胸郭が動いていない
エロンゲーションと呼吸は密接に関係しています。特に、肋骨の動きが乏しい人は、背骨を縦方向に広げることができません。
呼吸が浅い状態では、横隔膜の上下運動が制限され、体幹は常に緊張状態になります。この緊張は、エロンゲーションに必要な「余白」を奪います。
ピラティスで呼吸を重視するのは、単に酸素を取り入れるためではなく、背骨にスペースを作るためでもあります。
共通点⑤ 身体を「部分」でコントロールしようとする
エロンゲーションができない人ほど、「背中」「腰」「首」など、身体を部分的に捉える傾向があります。
しかし、エロンゲーションは局所的な操作では成立しません。足部・骨盤・体幹・頭部が一つのユニットとして統合されることで、初めて自然な伸びが生まれます。
身体を部分ではなく全体として感じる力(ボディアウェアネス)が不足していると、エロンゲーションは「難しい動作」になってしまいます。
ピラティスがエロンゲーションを可能にする理由
ピラティスは、筋力を鍛えるだけの運動ではありません。
- 足部感覚の再教育
- 骨盤と胸郭の位置関係の再構築
- 呼吸と動作の統合
- 身体全体を一つとして扱う運動学習
これらを通じて、脳と身体の協調性が高まり、結果としてエロンゲーションが自然に現れるようになります。
まとめ|エロンゲーションは「頑張らない人」ほど身につく
エロンゲーションができない人の共通点は、「伸ばそうと頑張りすぎている」ことです。
足元の安定、呼吸、身体全体の統合が整ったとき、エロンゲーションは意識せずとも起こります。
もし「うまく伸びない」と感じているなら、それは能力不足ではなく、アプローチの順番が違っているだけかもしれません。ピラティスを通じて、無理のない伸びる身体を取り戻していきましょう。
