側弯症における呼吸の大切さ

― 呼吸は「背骨を整える」最も自然な運動 ―
側弯症(そくわんしょう)は、背骨が左右に曲がり、ねじれを伴う状態です。
しかし、その歪みは「骨」だけの問題ではありません。
実は、呼吸のパターンが側弯の進行や不調に深く関わっていることがわかっています。
呼吸が背骨に影響する理由
呼吸のたびに、肋骨と胸椎(背中の骨)はわずかに動いています。
息を吸えば肋骨が外へ広がり、息を吐けば内側へ戻る――。
この繰り返しによって、胸郭(胸のかご状の構造)は柔軟性を保ち、背骨をしなやかに支えています。
ところが、側弯があると胸郭の形自体が歪み、左右の呼吸の入り方がアンバランスになります。
凸側(盛り上がっている側)は空気が入りやすく、凹側(沈んでいる側)は動きが制限されやすいのです。
この「呼吸の左右差」が長く続くと、胸郭や背骨のねじれが固定化し、
さらに呼吸が浅くなるという悪循環に陥ります。
凹側への呼吸誘導がカギ
側弯症ピラティスでは、特に凹側への呼吸誘導を重視して行います
凹側の肋骨は筋膜や関節が硬くなっており、空気を送り込みにくい状態です。
そのため、手を添えて「この部分に空気を届ける」という意識を持ち、
呼吸で内側から胸郭を広げていきます。
これにより、
- 胸郭の柔軟性が高まる
- 背骨のねじれがやわらぐ
- 呼吸筋がバランスよく働く
という変化が生まれます。
呼吸は筋肉を“外から伸ばす”ストレッチとは違い、
内側から構造を整えるセルフメンテナンスになります。
呼吸がもたらす全身への効果
呼吸が整うことで、酸素供給がスムーズになり、自律神経も安定します。
側弯症の方が感じやすい「疲れやすさ」や「睡眠の質の低下」も、
実は呼吸の浅さが関係していることがあります。
そのため、胸郭の可動性を改善して呼吸が深くなると、疲労感の軽減や睡眠の質の向上が図れる可能性があります。
ピラティスにおける呼吸の役割
ピラティスでは、エロンゲーション(背骨を縦に引き伸ばすこと)を目的とした、胸式呼吸を行うことがあります。
これは、肋骨の側方と背中を広げる呼吸法で、まさに側弯症の胸郭の動きを改善するのに適しています。
呼吸とともに背骨を動かし、
「硬いところは動かし、使いすぎているところは休ませる」
それがピラティスによる側弯ケアの基本となります。
まとめ
側弯症の改善において、呼吸は“姿勢を整える第一歩”
呼吸の左右差を整えることで、背骨は自然に柔らかさを取り戻します。
意識的に深く、凹側にも空気を届ける呼吸を行うことが、
日常の中でできる最もシンプルで効果的なケアです。
背骨を治すのではなく、呼吸で背骨を「育てていく」。
それが、側弯と向き合う上での本質的な考え方となります。
