「内側運動制御系」を整えるピラティス 〜体の内側から“正しく動く力”を取り戻す〜

私たちは毎日、無意識のうちにさまざまな動きを行っています。
立ち上がる、歩く、階段を上る、物を持ち上げる——。これらの動きの裏で働いているのが、「内側運動制御系(ないそくうんどうせいぎょけい)」と呼ばれる神経システムです。
ピラティスは、この内側運動制御系を“再教育”することで、体の安定としなやかな動きを取り戻すメソッドとして取り入れられています。
今回は、初心者の方にもわかりやすく「内側運動制御系とは何か」、そして「なぜピラティスが効果的なのか」を詳しく解説します。
ややコアなテーマなので気楽に流し読みをしてください (笑)
1. 内側運動制御系とは?
内側運動制御系(medial motor control system)は、姿勢の安定や軸の維持を担う体のコントロールシステムです。
私たちが手足を動かす前に、体は無意識に体幹の筋肉を働かせ、バランスをとっています。これを「予測的姿勢制御」といい、まさにこの動きを司るのが内側運動制御系です。
~予測的姿勢制御の役割~
- 姿勢を正しく保持する
- 動作中に体幹を安定させる
- 転倒やケガを防ぐための自動的な準備動作を行う
この機能が低下すると、どんなに筋力があっても効率的に動けず、肩こりや腰痛などの慢性症状を引き起こしやすくなります。
例えば、左腕を上に挙げると人の重心は左に寄り、そのままでは左側に身体が倒れてしまいます。ですが、脳で運動の制御をする領域(小脳)が、身体が偏らないように、右側の体幹部に無意識化で筋収縮を入れて、身体が左に倒れるのを防いでくれています(下記図参照)

2. 外側運動制御系との違い
身体を動かすシステムには内側運動制御系のほかに、外側運動制御系といったものもあります。
外側運動制御系(lateral motor control system)は、主に大きく動かす・力を出す役割を担うシステムです。
内側運動制御系が“安定のための制御”、外側運動制御系が“動作のための制御”と言えます。
これらはどちらか片方が優れていればよいわけではなく、「内側の安定」+「外側の運動」が調和して初めてスムーズな動きが生まれます。
しかし現代人は、デスクワークやスマートフォンの使用などで体を固定する時間が長く、内側の制御系が働きにくくなっています。その結果、外側の筋肉ばかりが緊張し、動きがぎこちなくなっているのです。
3. 内側運動制御系が低下しているサイン
- 片脚に体重をかけて立つクセがある
- 背もたれに体を預けないと座っていられない
- 歩くと体が左右にブレる
- 肩こり・腰痛が慢性化している
- 反り腰や猫背が気になる
これらはすべて「体の中心が安定していない」サインです。
本来なら内側運動制御系が行うべき安定の仕事を、外側の筋肉が代償している状態です。
4. ピラティスが内側運動制御系に効く理由
ピラティスは、創始者ジョセフ・H・ピラティスがリハビリのために考案した“身体の再教育法”です。
筋肉を鍛えるというよりも、脳と筋肉の神経回路をつなぎ直し、正しい動きを再学習することを目的としています。
以下にピラティスの特徴をまとめました
(1)ゆっくりとしたコントロール
ピラティスでは、速く動くのではなく「ゆっくり正確に」動きます。
これにより脳が「どの筋肉をどの順番で働かせるか」を再認識し、内側運動制御系の働きを活性化します。
(2)呼吸との連動
胸郭を広げる胸式呼吸を使いながら動くことで、横隔膜や骨盤底筋、多裂筋、腹横筋といったコアユニットが自然に働きます。
呼吸そのものが体幹を整えるトレーニングになります。
(3)小さな動きに集中する
ピラティスエクササイズ中は数センチの動きでも「どこが動き、どこが支えているのか」を意識します。特に、マシンエクササイズを行う際は代償動作(体の動きの癖)が出やすいため、インストラクターは細かな体の動きの変動を観察しながらエクササイズを行います
この体性感覚トレーニングが神経制御の精度を高め、日常動作が安定していきます。
5. 科学的にみたピラティスの効果
- 体幹深部筋(多裂筋・腹横筋・骨盤底筋)の活性化
腰痛改善の研究でも、これらの筋肉の再活性化が確認されています。 - 予測的姿勢制御(anticipatory postural adjustment)の改善
動く前に自動的にコアが働き、転倒防止・効率的な動作へ。 - バランス能力・歩行パターンの改善
高齢者でも安全に姿勢安定力が向上することが報告されています。
6. 内側運動制御系が整うとどう変わる?
- 姿勢が自然に整う:背筋を「伸ばす」意識が不要に。
- 動作の安定:歩行や階段で体がブレにくくなる。
- 痛みの改善:腰痛・肩こり・膝痛の根本原因にアプローチ。
- 呼吸の深まりと心の安定:自律神経が整い、ストレスも軽減。
7. 初めての方が意識すべき3つのポイント
- 「感じること」を最優先に。正確に動くことより、自分の体の変化に気づくことが第一歩。
- 呼吸を止めない。呼吸を続けながら動くことで、神経の流れがスムーズになります。
- 継続が力になる。週1〜2回のペースで継続することで、数週間後には姿勢や動作の変化を実感できます。
8. 体験レッスンで「内側の安定」を感じてみましょう
言葉で理解するより、体で感じることが何より大切です。
当スタジオのピラティス体験レッスンでは、「内側運動制御系が働く感覚」を実際に感じられる内容をご用意しています。
✔ 正しい姿勢を取り戻したい方
✔ 慢性的な腰痛・肩こりが気になる方
✔ 運動が苦手でも無理なく始めたい方
まずは一度、ピラティスの効果を体験してみませんか?
体の内側が安定すると、驚くほど軽やかに動けるようになります。
まとめ
ピラティスは、筋力をつける運動ではなく、「脳と体の使い方を整える運動」です。
内側運動制御系を活性化させることで、姿勢・呼吸・動作が自然に整い、心身ともに軽やかさを取り戻します。
姿勢や慢性痛に悩む方はぜひ体験してみてください!